七人の反逆者

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「……やっぱりな」 脱力して吊り下がるスペンサーの隣に、同じ体勢でトニーが吊される。 天井から垂れる鎖が独りでに動き、彼の両足を縛ったのだ。 つぶやきをあげたスペンサーは、浅く息を吐いてトニーに目をやる。 一人残されたジェシーは、辺りにある鎖を警戒してその場を動かない。 「正直、最初は驚いたわ。あんた達二人が私に会いにくるなんて、思ってもみなかったから」 女性は棚から下りて床に立ち、銃を後ろ腰のホルダーに入れて黒い櫛を指で撫でる。 ジェシーには一瞬だけ視線をやったが、彼女は二人だけに話しかけている。 「“ログロット教”についての情報が欲しいんだよ」 するとスペンサーが言葉を返し、吊された状態で腕を組む。 逆向きなので、表情が辛そうだ。 「その前に、私に返すものがあるでしょ? 昔のよしみで今まで待ってあげたけど、もう時間切れよ」 「もうちょっと待ってもいいんじゃねぇ……かッ!?」 さらなる延滞を要求する途中で、スペンサーは首を鎖に絞められた。 彼ら二人は、女性から金を借りている。 それも、莫大な金額だ。 「“斬巣の湖”を探す時に貸した金よ? 何年前だと思ってるの?」 「そんなの覚えてるわけねぇじゃ……かッ!?」 トニーもまた、苦笑混じりの発言を鎖によって阻止された。 首を絞められ、二人はもがき苦しむ。 それを見ていたジェシーが、女性の側に近づいていく。 「や、やり過ぎじゃない?」 「このくらいでちょうどよ、こいつらにはね。ところで、あんたは?」 彼女が黒い鉄製の櫛を軽く振ると、首に巻きついた鎖が緩くなる。 「ゲホッ!」 「ゴホッ!」 二人が首を押さえて咳込む中で、ジェシーは確信する。 目の前にいる女性は二人の知り合い。 情報集めの際に出てきた、七人の中の一人だ。 そして、 「あたしはジェシー。一応、“泥棒業”をやっているわ」 「そう。私はリンジーよ。“武器の密売”をやってて、たまにだけど“暗殺”もやるわ。よろしく」 ジェシーが名乗ると、相手も自身の名を口にした。 リンジー・ウェストエール。 スペンサーの過去には、彼女の名が必ず出てくる。 トニーも合わせて、彼ら三人には重要な繋がりがあるのだ。 決して切ることのできない、重い繋がりが。
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