七人の反逆者

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「……」 リンジーは何も言わずに、もう一度鉄製のクシを取り出して、軽く振る。 すると、天井高くに吊り下げられた二人の内、トニーだけが元の位置まで下がってくる。 「ぎゃあああ!」 彼は床に頭が触れる直前で止まり、絶叫した。 サングラスは勢い余って床に落ち、数滴の涙をその場に垂らした。 「トニー、あんたなら知ってるでしょ? 話してあげなかったの?」 リンジーは彼の側に歩み寄り、クシを直してそう尋ねてきた。 「何を?」 「彼女が探してる秘宝の情報よ。ていうか待って……あんた泣いてんの?」 「俺が“高所恐怖症”だって知ってるだろ!?」 トニーの表情を見たリンジーは、眉を潜めて彼という人物の特徴を脳裏で思い出していた。 その中には確かに、彼が高所恐怖症だったという記憶がうっすらとある。 「あんな高い場所に吊り下げやがって! いくら温厚な俺でもキレんぞ!?」 「え? 何?」 「すいませんでした!」 再びクシに手をかけようとしたリンジーに、トニーはすぐ謝罪した。 もう一度、スペンサーと同じ位置まで高くされたら、股間から液体が垂れそうだったからだ。 「で? 話してないの?」 そして話は戻り、本題へ。 リンジーの口調から察するに、彼も秘宝について知っていることがあるようだ。 しかし、 「俺が何を知ってるって? 身に覚えがねぇよ」 トニーはとぼけている様子もなく、きっぱりとそう言い放った。 「あれ? あんた、前に探してなかったっけ? エターナル・エントランスよ?」 「俺は探してねぇ! 不死になんか興味ないしな!」 「そうだっけ?」 リンジーは首をかしげ、クシに触れてスペンサーを床直前にまで下ろす。 「ッ……なんだよ!?」 不意の急降下に冷や汗を流す彼は、また下向きに垂れ下がった黒い首飾りを掴み、怒鳴る。 「あれを探してたのって誰だったっけ? あんた?」 「“レイド”だろ? トニーじゃねぇよ」 スペンサーが口に出したのは、ある人物の名前。 それを聞いて納得した彼女は、 「あ、そっか。もういいわ」 「ぎゃああああああ!」 再びスペンサーを、天井近くまで吊り上げた。
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