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「この日誌によると、“ログロット教”の民族は秘宝のありかを、ある一族に託したとされてるわ。その直後に文明は滅び、一族は消息を絶ったって」
日誌を閉じ、リンジーはさらっと言ってのけた。
かつて、“ログロット教”が栄えた場所として伝えられる島、“彩壇島”。
そこから秘宝の秘密を握る一族が去り、文明は滅びた。
なら、エターナル・エントランスへの鍵はその一族にある。
さらに、
「この日誌の所持者が、一族の子孫、その末裔(まつえい)よ。鍵は、そいつが握ってる」
彼女の言葉に驚愕したのは、スペンサーとトニーだけではなかった。
日誌を盗んだジェシーでさえも、この事実は知らなかったようだ。
「誰からこの日誌を?」
リンジーは当然、この疑問を投げかける。
エターナル・エントランスへの鍵を握る人物を、彼女は知っているからだ。
「持ち主はマーティン・クラフトという男よ。危険な奴で、さっきも言ったけどいろんな秘宝を持ち歩いてる」
それを聞いたスペンサーとトニーは、脱力するようにため息をついた。
その動作は、リンジーの屋敷に来るという提案が出た時と似ている。
「M・クラフトかよ……」
「マジでか? 今回の依頼は多重苦すぎるぜ」
マーティン・クラフト。
通称 M・クラフトは、裏の人間でなくとも絶対に知っている。
この世で最も広い大陸、フィニムール大陸にある小さな島国を拠点とし、様々な活動を行っている男だ。
その島国、ルックスランドには大きな特徴がある。
それは、国に警察という仕組みがないこと。
いわば何をしても警察に捕まらない無法地帯。
だが、決して治安が悪いわけではない。
その理由が、M・クラフトという男の存在だ。
自らをビジネスマンと豪語し、保持する資金で国を買ったのが七年前。
それから、ルックスランドで犯罪を行う者はいなくなった。
M・クラフトが国を支配する限り、彼に逆らえば殺される。
独裁者であり、恐怖政治を行っているが、市民からの反感は受けていない。
ルックスランドは娯楽を集めた国。
M・クラフトは国を買った後、遊園地や水族館といった観光スポットを、国中に展開したのだ。
首都であるルックスシティには巨大なカジノ。
そこに、彼が在住している。
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