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三人が屋敷を出て、ラウナシティからジルバタウンに戻ってきた頃には、すっかり日が暮れていた。
城下町であるこの場所の活気も薄れ、空にはちょうど半分だけ顔を見せる月と、全身で地上に光を届けるいくつかの星々。
空気が澄んだ夜の城下町も、なかなか神秘的だ。
ジェシーがそんな町を眺め、感傷に浸っていると、次に視界に映ったのはどうしようもないボロ屋だ。
ドアノブが壊れたため、スペンサーはそれを蹴りつけて開き、中へ入る。
屋内を覆い尽す青いビニールシート。
それを見たジェシーの口から、またため息が漏れた。
「なんでビニールシートなのよ?」
前に来た時も思った疑問という不満を、彼女はついにスペンサーへぶつける。
「だってよ、木が腐ってんだもん」
「それマジで言ってんの?」
「マジで言ってんの」
どうやらこのボロ屋は、彼女が思っていたより酷い状態らしい。
なんでも、スペンサーは金がなく、町の外れにある木を何本も切り倒してこの小屋を造ったらしい。
屋内には二階へ上がる階段があるが、上の床も腐っているため、危険なので二階には上がれないとか。
「家、買わないの?」
「うるせぇ、今はチョコを買う金もねぇんだぞ? 家なんか買えるか」
「ねぇ、トニー。あんた達、秘宝を見つけるプロなのよね? 何個も見つけておいて、なんで一文無しなの? 多額の借金もあるし」
「いろいろあってな。それに俺はプロじゃねぇ。スペンサーと違ってな」
相棒のトニーは詐欺師。
彼は探し屋じゃなく、詐欺をして金を稼ぐ悪人。
だが、やりすぎていろんな国から追われ、このボロ屋に転がり込んだそうだ。
「普通、Aランクの秘宝を“倉庫”に入れたら曾孫(ひまご)の学費だって賄えるわよ?」
「金なんか、使ったら無くなるんだ。それより、仕事の話をしようぜ」
そう言ってスペンサーは、部屋の中央にある椅子へ腰を下ろす。
直後、鈍い音をたてて椅子は砕け散り、彼は腐った床で尻を強打した。
「う、嘘……だろ……?」
真剣な顔で椅子の破片を持ち、つぶやくスペンサー。
ジェシーは彼を見ていると、だんだん可哀想に思えてきた。
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