七人の反逆者

17/19
前へ
/517ページ
次へ
「とりあえず、ルックスランドに行くならチケットがいるぜ? 飛行機でも船でもいいが、俺は豪華客船に乗りたい。あそこは有名な観光地だし、いい旅ができそうだ」 壊れた椅子を見て呆然とするスペンサーをよそに、トニーは紫の篭手を外しながら提案を持ちかける。 「チケット代はあたしが払うんでしょ? だったら飛行機がいいわ。船だと時間もかかるし、あの大陸付近の海は何かと危ないしね」 ジェシーはその提案に反対。 彼らが目指すルックスランドがある大陸は、こことかなりの距離がある。 それに、フィニムール大陸の近海は危険なのだ。 あの辺りには“海賊”が出るという噂があり、何年か前に豪華客船が沈められたという前歴もある。 最近は姿を見せないようだが、大陸に着く前にあまり危険は犯したくない。 だが、 「いいか? 俺は高い所が大っ嫌いだ。飛行機なんかで行く気はない。飛行機なんて消えてしまえばいいのに」 トニーは彼女を指差し、真面目な顔で言い放つ。 「知らないわよ。豪華客船ってツアーでしょ? 時間がかかるじゃない」 「知らないとはなんだ!?  高所恐怖症舐めんなよ?  チビったらどうする!」 「どうもしないわよ! その時はあたしに近づかないでちょうだい」 「白々しい小娘め!」 「うるさいわね、男のクセに」 二人が口論をしている間、スペンサーは椅子の破片を拾い集めていた。 「マジかマジかマジかマジかマジか……」 小さな声でつぶやきながら、集めた破片を屋内の隅へ寄せる。 そして両手を合わせ、静かに黙祷していた。 そんな中、口論には決着が訪れそうだった。 「よし、わかった! こういう時はコインで決めよう! 表が出たら船だからな」 「望むところよ!」 トニーが小さな硬貨を取り出し、指で弾いて手の甲に乗せる。 そして上から被せたもう片方の手をどけると、コインには表を表す∞のマークがあった。 「よっしゃあ! 表だぜ!」 「ちょっと待ちなさいよ!」 ガッツポーズをとるトニーからコインを取り上げ、ジェシーはじっくりと観察する。 表には∞のマーク。しかし裏返しても、同じ∞のマークが刻まれている。 「何よ、どっちも表のコインじゃない! こんなのイカサマだわ!」 「俺は詐欺師だ! 文句言うなぁ!」 この口論に、決着は訪れなかった。
/517ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20168人が本棚に入れています
本棚に追加