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「“炎流具術・合咲き(あいざき)”……」
互いの銃口同士を狙い定め、スペンサーは慌てることなく迫る乱撃の中で引き金を引いた。
「“薔薇(ばら)”!」
瞬間、全く同時に銃口から飛び放たれた二つの火の粉がぶつかり合い、炸裂。
その爆発を上に持ちあげるようにして、勢いよく両手を頭上へ伸ばした。
爆発の業火と暴風は上方だけに襲いかかり、美しい花弁をかたどって渦を巻き、さながら薔薇のような姿になる。
その炎の花は落下する砂の弾丸を受け止め、呑み込むように焼き尽くす。
前方から飛来する斬撃はその場で屈んでかわし、盾の役割を果たす業火の薔薇の陰に隠れて、砂の雨をやり過ごした。
やがて、刃を離れた一閃の太刀筋が、虚空に咲く紅蓮の花を二つに割り、花弁を散らせて消してしまう。
それを待っていたかのように落下してきた黒光りの銃が、業火を吹く武器をホルダーにしまったスペンサーの手の上へ。
「あの世で仲間と再会すんのはてめぇの方だ」
すかさず二発の銃声。放たれた弾丸はM・クラフトの右膝と股(もも)にめり込み、
「……ぐぉ!?」
彼を仰向けに転倒させる。
「あの世で会って謝るんだ。お前が殺した人達に、誠意を持って詫びな」
それでもスペンサーは、銃を下ろしはしなかった。
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