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大小様々な岩片が雨のように降り注ぎ、一瞬だが二人の視界を閉ざす。
上顎と下顎。その二つが一つとなった巨大な嘴が火口を挟んで噛み砕き、首筋の生ける者達が放つ声が増加する。
それはこれから、“不死鳥”の暴走を知らせる警報のような気がしてならなかった。
「ッ……マズい!」
落下をやめない岩片は、大半がまともに受ければ体を潰すほどの大きさだ。
スペンサーは迫り来るそれらの位置を正確に見極め、かろうじてだがかわしていく。
祭壇との距離は開き、舞い上がる粉塵で視界が閉ざされるものの、少しのダメージも無しに全てを避けることができた。
「さて、どうやれば不死を奪い取れるのか」
杖から発生する斬撃で岩片を切り裂き、一歩も動かずして固い雨を凌ぎ切る。
場を埋め尽くす砂煙は笛の音につられて渦を巻き、岩の大小に関係なく全てを退け、ふき飛ばした。
砕かれた火口、その広くなった穴の向こうでは、死者となりたい哀れな魂と身を共にした怪鳥がギラついた視線を送ってきている。
そして偶像かあるいは故意にか、虹色の光で島に橋を架ける祭壇は、岩の雨の中でも傷ひとつ付いていなかった。
「とりあえず、地に引きずり下ろしてやろう」
M・クラフトはただ冷静に、首に下げた角笛を掴んで自身の口元に近づける。
だが、スペンサーは全力で疾走し、岩の間を縫って素早く接近すると、跳躍からの強力な蹴りを見舞ってその動作を中断させた。
「なんのつもりだ?」
角笛を掴んだ手を弾かれ、後退するM・クラフト。
「それはこっちが聞きてぇよ」
彼の眼前で二丁の銃を構えるスペンサー。
しかし二人の会話は、上空からの一撃によって交わすことなく終わる。
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