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山が崩れ落ち、足場が砕ける。
巨大な嘴に刺され、貫かれた外壁は無惨にも大破し、無情な連打を浴びて降り止まぬ雨となった。
その内部で争う二人は真っ逆さまに、階段や坂道で登ってきた経路を強制的に直線で後戻りする。
下に見えたのは大きなプール。
壺に水を入れる仕掛けを解いた部屋に、スペンサーはかろうじて着地した。
「なんて野郎だ……山を壊しやがった」
落下する岩の破片を足場にして飛び移り、階段を降りるように着地時の衝撃を減らす。
そうすることで無事に地へ足をつけた彼の後方で、
「フン、さすがはAランクの価値がつけられた秘宝というわけか」
床を撫でる砂の渦で足場にした岩を浮かし、エレベーターのように降り立つM・クラフト。
その自信を失わない声に反応し、スペンサーは素早く振り向いて金色の銃口を向ける。
「貴様もしつこい奴だ。この状況で争って何になる」
呆れた口調でそう言う独裁者を尻目に、彼は共に落下した祭壇を見て驚愕する。
空洞だった山は外壁を失い、今やただの平地になっていた。
それをした秘宝をこの島に呼び覚ました祭壇は、強固な砂の渦に守られている。
相当な技術がなければできない芸当。M・クラフトの繊細かつ強力な“宝具闘術”により、光を放つ祭壇は無傷を保っていた。
「今すぐこの島から逃げても、私は追わん。脱出するなら今がチャンスだ、少しは冷静に思考を回すんだな」
その言葉の直後に、ボサボサの金髪が滴り落ちてきた血で赤く染まる。
見上げてみれば、巨大な嘴はすぐそこ。
その小さな開閉を繰り返す口の中に、山の頂上付近で息絶えた者達の体が吸い込まれていった。
歯のない口内で咀嚼され、喉へ堕ちる人間の体。
その数人の中には、スペンサーに意志を託した勇敢な人物もいたハズだ。
「……ッ!」
引き金に指をかけ、両手に持つ銃を握り締める。黄金の銃身が軋みの音をあげるほどに、彼の手には怒りの力がこもっていた。
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