20176人が本棚に入れています
本棚に追加
空にとどまっていた“不死鳥”が、ゆっくりと降り立つ準備をする。
近づいてきて初めてわかったが、苦しみの声を放つ先民の顔は首筋に浮き出た分で全部ではない。
羽根や羽毛で覆われた翼や腹、胸、眉間にまでも、びっしりと秘宝自体を埋め尽くしているのだ。
「……こんなものを、あいつは守っていたのかよ」
小さく、断末魔に呑まれて自らの耳に届かぬ声で、しかし確かに言葉をこぼす。
「何の為に守って、何の為に命を賭けて……」
続いて視線は砂に隠された祭壇へ。そこから放たれる虹の光が、真上で高度を下げてくる秘宝をここに留めていることを確信する。
「……何の為に、あいつが泣いたと思ってんだ!」
レンガで構築された床を蹴り、勢いよく前へ。
彼が目指す先にいるのは、岩の破片から飛び下りたばかりのM・クラフトだ。
「託されたまま逃げれるかよ! 人を馬鹿にすんのもいい加減にしろクズ野郎が!」
左手を引き、右手を前へ。それと同時に高く跳躍し、残り三つの弾を駆使して繰り出される彼の最後の技。
「……何をそんなにムキになっている?」
その覚悟を前にして、M・クラフトはため息混じりの言葉を吐く。
「これ以上てめぇの好きにさせるわけには……いかねぇんだよ!」
「手遅れと言ったのがわからんのか……小僧が!」
諦めないスペンサーに、相対する独裁者の余裕が怒りに変わる。
直後に、黄金の銃口から一発の火の粉が飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!