その男、探し屋

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『スペンサー? ああ、あの金髪ね。近寄らない方がいいんじゃないか?』 『あの馬鹿に関わるのはやめとけよ。身がもたねぇぞ』 『スペンサー・ネックエール? あんなイカレた野郎に何の用だい?』 『本当にイカレてるわよ? この前なんか城に火をつけようとしたし……』 『変な金色の銃を持ってる男でしょ? スペンサーって。危険よね』 『奴の噂はよく聞くぜ? なんでも頭が……イッちまってるとか』 『この街にいるってのは確かだ。奴の家がある……ボロッボロの小屋さ』 ―――しばらく聞き込みを続けたが、的を射ない情報ばかり。 女性はため息をつき、空を見上げた。 自分が捜している男の情報は、とんでもない。 一言で言えば“嫌われ者”。 そんな人物を見つけるのが果たしてプラスになるのか、彼女はそう考えると、頭が痛くなってきた。 そして、 「あの金髪野郎なら、鯨祭の前日に捕まったって聞いたぜ?」 聞き込みを続ける中で、彼女はとんでもないことを耳にした。 「捕まった!? 罪状は?」 「スリだよ。貴族の汚ねぇババァから財布を盗んだんだ」 若い男の証言を聞いて、彼女は再びため息をつき、頭を抱える。 捜している“ロクでなし”が逮捕されたのだから、いよいよ救いようがなくなってきた。 数分前は嫌われ者に同情すらしたが、一気にそんな気は冷めてしまった。 「留置されてる場所を教えてもらえる?」 呆れた表情で、女性は若い男に懇願した。 そこで留置所の場所を聞き、急ぎ足で“迎えに行く”。 紺のキャリーバックを引きずりながら、彼女は記念公園付近を後にした。
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