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また一時間後――――
「おい、釈放だ」
金髪の男が椅子に座り、床の模様を眺めている檻の扉が開いた。
彼をここに連行した中年の男が、鍵束を手に近づいてくる。
「鯨祭は終わったが、出れてよかったな。早く帰れ。お前みたいな奴を留置していると、部屋が汚れる」
「えれぇ言われようだな」
男は立ち上がり、首の関節を鳴らして欠伸する。
彼の受け渡しを、この国の軍は断った。
元々、存在自体が不気味で世間のはぐれ者として扱われていたが、この受け渡し拒否にはさすがの警察側も驚いたという。
興味のある警官数人で調べたが、前科無し。
鍵を開けた中年の男は、何か強力なコネでも持っているのかと考えたが、
「ていうか、なんで俺釈放?」
目の前のアホ面を見る限り、とてもそんな男には思えない。
「大陸の連邦捜査官がお前の保釈金を払った。理由は彼女に聞いてみな」
それだけを言い置き、警官の男は去る。
すると、彼と交代するように留置所へ入ってきたのは、黒スーツを着た細身の女性。
「ずいぶんと捜したわ」
なぜか彼女は、疲労した様子で足を踏み入れてきた。
男はボサボサの金髪を掻き乱し、眉を吊りあげて女性を見つめる。
「“探し屋”スペンサー・ネックエール。あなたはもう釈放されたわ。その理由は後で説明するけど、とりあえず今はここを出ましょ」
「……あんたは?」
スペンサーと呼ばれた男は、首を傾げて眉を潜める。
女性を警戒しているようだが、いまだに続いている空腹を耐えているようにも見てとれた。
「あたしは大陸の連邦捜査官、ジェシー・ルークラバードよ。よろしくね」
そう言って差し出された手は、握手を求めるもの。
彼は少し迷いながらも、素直にジェシーと名乗る女性の要求に応じた。
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