聖女略奪

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辺りには誰もおらず、がざがさと走る音だけが辺りに響く。森は薄暗く夜の闇が辺りの静けさを表すようだ。 人間の肉眼で見付けるのは至難の技だ。 音は一旦止み、闇に蠢いている三つの影は城壁を越えて、その中に入っていった 。 黒いマントに仮面を被っている為、表情はわからないが、体格から男だとわかる。 無駄な脂肪が無く、引き締まった筋肉が時折マントの中から見えた。 一人の男が残りの二人に指示を出す。 「聖女を略奪するのが今回の我々の任務だ。敵の魔力がSSSクラスを越える者がいるという情報もある。心して向かえ。必要ならば聖獣化しても良い。では行くぞ」 夜の闇に男の声だけが響く。 声からして、三十代前後といったところか。 「御意」 低く冷たい声が辺りに響く。 それを発したのは黒いコートを身に纏い、フードを被っている為に素顔が見えない青年だ。 「…」 ホワイトタイガーの上に股がり、その頭を暢気に撫でている子供からは返事がない。 「おいっ!ナンバーⅦ返事をしろ!」 フードを被っている青年が返事のないナンバーⅦと呼ばれた黒いマントの子供に怒鳴りつける。 声からして、苛ついているのだろう。 ナンバーⅦはマントの中から手を出し顔を覆っている仮面を外した。 悪魔のように妖しく笑い、赤い瞳で青年を見つめた。 顔つきが顔つきのためか、少女のようにも見える。 「わかったよ。聖女さえ奪えば他に何してもいいんだね?ルマニティ」 「構わぬ、リリアーだが力の暴走だけは勘弁してくれ」 リーダー格であるルマニティはそう言いながらナンバーⅦであるリリアーの頭を優しく撫でた。 「ふーん、何してもいいねぇ。面白くなるな…」 その様子を傍観するように見ていたフードを被っている青年は口角をあげ、誰にも気づかれないように笑みを浮かべた。
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