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――ブラウン管のむこうでは、自分と同じくらいの年頃のそこそこの美男美女たちが、綺麗な青春を演じきっている。
恋愛に部活に、ちょっぴり勉強。喧嘩をしてもすぐに仲直り…。「なんか完璧すぎて、逆に面白いかも。」皮肉まじりに、奈々美はぼそっと呟いた。
高二の夏休み。17歳。
子供といえば子供。だけど、大人になるための準備をする大切なお年頃。そんな大事なときに、自分は人並みの経験を全くしていない…。そう思うと、奈々美は強い焦燥感と不安感に駆られてしまう。
奈々美には今、友達がいない。不登校の一歩手前で、何とか踏み止まっているところだ。
別に、いじめや嫌がらせを受けているわけではない。でも、怖くて同級生たちと距離を置いてしまうのだ。わかりやすく言うと、奈々美はとにかくコンプレックスの塊であった。
自分に対する自信のなさから、「同級生と仲良くしよう」という当たり前の意欲が完全に削がれてしまっていた。
「どうせ裏切られる、どうせ嫌われる…」そう思って、こちらからは手を打たないことに決めていたのだ。
顔がいいわけでもないし、体型もぽっちゃり気味。肌も綺麗ではない。おまけに成績も悪い方だし、運動も苦手。こんな自分に魅力なんて無い!奈々美はそんな自分が大嫌いで、塞ぎこんでしまっていた。
だから、夏休みも特に予定などなく、ずっと家でひとりで過ごしていた。暇な時間が多すぎて、テーブルに宿題を広げながら学園ドラマの再放送を追う日々が続いている。
綺麗で理想的すぎる展開だけど、何も青春していない0の自分が見れば、なんだか中和されて、ちょうど良くなるような気がした。
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