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遅い。
遅すぎる…。
緑から焼き肉に誘われた。
なのに来る気配さえない。
待ち合わせ時間は7時ジャスト。
今は7時20分。
なんなんだよ、あいつは!
別に俺がメールで断って帰ればいい話だけど、生憎その選択肢はない。
緑が好き。
片想いだけどね。
だから、折角の誘いを断るだなんてマネ俺には出来ないんだ。
……こんな遅刻魔、何で好きになんかなっちゃったんだろう。
バタバタッ
いつも聞いてる彼のお気に入りのスニーカーで走る音がした。
「ごっ、ごめん!遅れちゃって」
「いーですよ。その代わり奢ってね」
「ぅ…はい」
本当はさ、こんな事言いたかった訳じゃないんだ。
意地悪して、嫌われるんじゃないかって。
でも彼の優しさに縋って、甘えてしまう。
「焼き肉のお礼に今度ジュース奢りますから」
「焼き肉にジュースじゃ割にあわないよ…」
今日も良い日だ。
緑と一緒にいられる。
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