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「食え、食え!」
「…こっちは肉食べに来てんすよ」
「スープとかあるでしょうが!」
「緑さん、お店なんで静かに」
緑らしい賑やかな店。
こんな場所、あんまり来ないからな。
半分くらい聞いている緑の話はそんなに面白くも無かったけど、緑の笑顔が見れるだけで幸せ過ぎて何だか笑えた。
「ふぅ…おいしかったね」
「えぇ、つか食い過ぎでしょアンタ」
「黄が食べなさ過ぎなの!」
他愛ない話。
そろそろ、お別れの時間だ。
やっぱ、寂しいモンなんだよな。
呆気なくて。
当たり前なんだけどさ?
恋人じゃあるまいし。
「黄、じゃあね!」
分かれ道。
俺は左で緑は右。
「…黄?」
なんでだろ。
目から温かい何かが頬に伝う。
「大丈夫?なんか嫌なことでもしちゃった?俺」
「…ッちが、」
「…心配だから家まで送るよ」
手を引かれて歩き出した。
あれ、よく俺の住所覚えてんな。
忘れっぽいくせに。
「辛いこととかあったら言ってね」
「……緑さんはさ」
「ん?」
俺が辛い顔してると、アンタまで辛い顔になる。
俺が笑えば、アンタまで笑う。
俺がもし幸せになったら、
アンタも幸せになる?
想いを伝えるだけでも幸せだと感じれると思うから、この一瞬は迷惑でも俺が幸せになったらアンタも幸せになれるかな?
「…同性の恋愛ってどう思う?」
「いいんじゃない?それに俺の好きな人も男だし」
「えっ!」
うわ、告白する前から振られちゃったか?俺。
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