綺麗?

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「…アンタみたいな手になりたかった」 「おいらは黄みたいな手になりたかった」 嫌だよ、青はこの綺麗な手じゃなきゃ。 「黄はその手でいてよ」 「…なんで」 「手が入れ替わったら、 その手もう触れないじゃん」 「……俺も」 2度とこの手を包めないなんて、嫌だ。 「じゃあ…このままがいいって事?」 「ふん。これでいいの」 スッゴく憧れた手は、やっぱり 青の為の手で。 スッゴく嫌いな手は、やっぱり 俺の手で。 「ひとそれぞれが一番なんだよ」 「珍しくマトモなこと言うじゃん」 「めずらしくないもんっ」 ぷいっとそっぽを見るアンタ。 指が袖に隠れて見えない。 「あ、そうだ」 「………なに」 んないじけんなって。 「指、貸して」 「貸せないもん」 「…手、出してって意味なんだけど」 「こう?」 不貞腐れた顔のまま、両手を差し出す。 「目、つぶってよ」 「えぇ、このまんま?」 「うん」 渋々といった様子で目を閉じていく。 綺麗な薬指に、俺が選んだ綺麗なリングをはめる。 「ぅ、つめた」 「開けて」 「……?…っぁ、指輪」 気付くの遅いよ、馬鹿。 「アンタによく似合ってる」 「なんで、指輪?」 「決まってんじゃん?」 ポケットに入れといた、 ペアリング。 「青、はめて」 「…ん」 お揃いの2つの指輪。 「これで俺の指も綺麗に見える」 「これ、なんなんだよぉ」 いつもより眉がさらに垂れ下がるから。 「だーかーら、決まってんじゃん?」 「わかんねぇ」 (結婚しよ?) (小さな2人だけの結婚式) end
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