誰か

4/4
前へ
/220ページ
次へ
「……あ」 仕事が始まる前に、アイツは来ていた。 「…ぉはよ」 「うん、何時から待ってたの?」 只今、AM8:30。 「さっき来たとこだよ」 「あっそ」 「そーいえば、聞いてなかったんだけど」 「何?」 「なまえ、教えて」 本名を教えるのは何だか気が引けた。 だから、源氏名を教える。 「カズ、ですよ」 「…かず」 「何ですか」 「うんう、言ってみただけっ」 嬉しそうに笑った後、小走りで 何処かへ走っていく後ろ姿。 名前のためだけに来たのか…。 残念だったね、教えたのは この汚れた世界での名前だよ。 どうせすぐ飽きるんだからさ。 毎日来なくてもいいんじゃない? 「…あ、時間ギリギリ」 ゆっくりとホテルに待っている客に逢うためにエレベーターに乗り込んだ。 (アイツに逢う度、何故だろう) (妙に胸が高鳴るんだ) next. .
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

317人が本棚に入れています
本棚に追加