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趣味の悪い部屋に入る。
まるでその行為のためだけに作られたかのようで。
絶対、安いからって理由で来る一般客もいるのに。
「…どうしたらいい?」
「なにが?」
「俺はシャワー浴びた方がいいの?」
「あー、いいや」
「……じゃあ」
俺の首に腕を巻き付けてきて。
わざとリップ音がなるようにキスされる。
「いっぱい愛して」
「…いいよ」
そこからはもう、縺れながらも抱き締めてキスを繰り返しながらベッドに行って。
何故か分からないけど、黄が一瞬あの頃に戻ったんじゃないかって思った。
…でも、変わったんだね。
あの頃の黄はそんな暗い瞳をしてなかった。無理して声をあげることも、自嘲するような笑みも…まるで人が変わってしまったかのよう。
「あぉ…っ」
「どう…した?」
「離さない…で?」
あぁ、黄と呼びたい。
愛してると、今でも変わらず愛してると伝えたい。
君はもう覚えていないだろうあの頃からずっと好きなんだ。
「かず…っ」
昔からだよね。
悪さする時とかに使う偽名。
決まって「かず」だった。
ねえ、思い出して…?
黄と俺の過去を。
(ただ、見てるだけで良かった)
(その筈だったのに)
next.
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