第三章 イルカのネックレス

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阿波踊りもすっかり終わり、秋の風が顔を撫でる。 少し肌寒い季節になった私は、ある目標ができた。 仕事帰りに宝石屋でみかけたイルカのネックレス。 私の給料2ヶ月分なんだが、出費を計算すると手が出せないものだった。 「理恵いっつもそのネックレスみてるよねー」 恵里子はマックで買ったシェイクを飲みながら、横から話しかけた。 「だって可愛いんだもん」 ショーケースを背にして歩きながら、そう言った。 あれから浩介とは毎日メールでやり取りしている。 そのやり取りで私はますます浩介の事が気にかかっていた。 「さて、バイトいってくるね」 恵里子に別れを告げ、仕事に入った。 「理恵ちゃんおはよう」 店長はいつものはにかんだ笑顔で私に挨拶をなげかける。 「おはようございます」 その一連の流れを終わらした後、せっせと仕事の制服に着替えてフロアーに出た。 いきなり客の呼び寄せ。 私はそれに答えようと席に行く、とそこには浩介がいた。 「やあ、コーヒーくれる?」 少し私は驚いたが、それに躊躇することなく店員な応答をした。 「かしこまりましたー」 でもそれだけではなく、ニコッと微笑みをなげかけた。 コーヒーをもってきた私は、小声で 「どうしたの?」 ときいてみた。今までプライベートでは時々会っていたが、店にきたのは初めてだったからである。 「ちょっと働く姿がみたくて」 と恥ずかしくなって頬をトレーで隠した。 「来てくれてありがと」 そう私はいうと浩介は軽くうん、と頷いた。 少し時間がたって浩介は店から帰った。 「理恵ちゃん彼氏いたんだね」 店長はまたあのニッコリ笑顔できいてきた。 「あー、あれは違うんです」 照れ隠ししながら急いで帰り支度をして店を飛び出した。
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