第五章 孤独、嫌悪感、覚める夢

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あれから月日が経ち、2人はなんの進展もなく夏が訪れた。 しかし、理恵の体調は悪化していった。 食事ももうろくにのどを通らない。 仕事もできなく、おおかた休みがちになっていった。 でも私は恵里子や浩介には心配かけたくないので、2人の目の前では元気でいた。 しかし、日に日に私はやせ細っていった。 気になる私は病院へ行くと儚い現実をたたきつけられる。 「末期ですね、癌の。胃癌です」 私は目の前が真っ暗になった。 でも、奇跡はおこるはず。原因の胃を取り除く決心をした。 私は病気になんか負けない。元気になって、浩介と……。 しかし、手術は行われなかった。 癌は血液にまで転移していたのである。 白血病、私はその悪夢にうなされることになる。 毎日毎日の抗がん剤治療、血を吐くこともあった。 体は物凄くやせ細り、骨と皮になってもなお延命治療は行われた。 毎日が地獄、もう生きる希望ももてない。 友達にも浩介にも言えない……。 ただそのことが気がかりであった。 金木犀が香る頃、理恵は死んだ。 イルカのネックレスと一通の手紙を残して……。
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