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細く笑みを浮かべながらタカさんは俺にそう言った。
それを聞いた俺は「ふ~ん」と鼻を鳴らしながらカウンター前の席に座る。
するとタカさんは俺の前にアイスコーヒーとバニラアイスを差し出した。
「外は熱かったろ? とりあえずここで一息着いてきなさい。それは俺からのサービスだ」
「タカさん。いつもありがとう。それじゃお言葉に甘えて」
俺は笑顔で感謝を伝えるとスプーンを手に取りアイスを口に運んだ。
口の中に程よく広がるバニラの香り。そして今の熱さにはピッタリの冷たい感覚。
甘過ぎず、飽きのこない落ち着いた味。さすがタカさんの手作り。コンビニの市販アイスとは別格だ。
だが本命はデザートじゃない。
メインはタカさん自慢のコーヒー。厳選された豆から煎れる香り高いコーヒーは鼻の奥をくすぐる。
これがホットコーヒーだったら絶品の一言に尽きる。
タカさんのコーヒーを一口でも飲んでしまったら市販のコーヒーなんて苦くて黒い水だ。
俺が一息着いているとカウンターの奥から一人の少年が現れた。
「おっ! 勇貴! 今日も相変わらずダルそうなツラしてんな!」
笑いながら憎まれ口を叩くコイツが山田 隼人(ヤマダ ハヤト)。
同じ野球部でポジションは俺と同じピッチャー。
県外からの特待生でタカさんの家に住み込みで働いている。
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