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勝負は10分。着替え、歯磨き、食事。それらを全てすませ急ぎ定時までに電車に乗り込まなければならない。
さもなければ、俺を待つのは遅刻と言う名の死だ。
これだけはなんとしてでも避けなければならない。
「うおりゃああああああ!!!」
こんな調子で俺の朝は始まる。
髪は特にこだわりなんてないので軽く水で寝癖を矯正、歯磨きもテンセコンド3うがいで十分。
食事は見事に目玉焼きと味噌汁とかものすごくベタな朝食を用意するのがうちだ。しかし俺にそんな時間などない。
行儀が悪かろうとなんだろうと全部無理矢理かきこんで早めに済ませる。
親に叱られようが関係などありはしない。とにかく遅刻だけは嫌だ。
叱咤を聞き流し鞄を片手に玄関へ駆け、その勢いを止めぬまま外へと飛び出す!
「のろま。準備にどれだけ手間がかってるのよ」
外にでてみればまたもや奴が俺の家の前で仁王立ちしていた。いくら家が隣同士だからとはいえ毎度毎度俺を待つなどご苦労なことだ。
「うっせ。いつもいつも待ってないで先行けばいいだろうに。馬鹿かテメェ」
「馬鹿はあんたでしょ馬鹿。ド忘れが取り得の寝坊助」
「一言どころか全言余計だろ!? ……って時間がねぇ、走るぞ!」「あぁ、もう!! あんたと関わってるといつも碌な事にならない!!」
「こっちの台詞だコノヤロー!!」
かくして、駅に辿り着くまでに俺と奴は罵詈雑言を繰り返しながら走るのであった。
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