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どちらかと言うと、学校は嫌い。 自分の服装、成績、立ち振る舞い、全て監視されるから。 他の子のように自由が利かないから。 毎日が憂鬱。 少なくとも、私、宮野悠理(ミヤノ ユウリ)はそう思う。 「空、キレー…夏の空って気持ちが晴れ晴れするな…」 他人が聞いたら「何言ってんだ、コイツ。」と思うだろう。 それは私の見た目にある。 7月中旬、日差しもいよいよ強くなるというこの時期に校則通りの膝下まで伸びるスカート、ポロシャツを着た上に長袖の灰色のカーディガン…それも冬に着るような厚手のものに袖を通しているから。 誰が見ても、とても晴れ晴れしそうもない格好。 寧ろ、日差しの強さから身を隠していないと倒れてしまうのではないか、と思うだろう。 緩く2つに結った長い黒髪がいっそうそれに拍車をかける。 一言でまとめてしまうと、まるで病人のようだ、といったところだろう。 間違ってはいないのだけれど。 事実、私を生んで間もなく亡くなった母は体が弱く、子どもを産めるほどの体力がなかった。 それでも母は命を私に捧げてまで産んでくれたのだけど、身体の弱い母から産まれた私は、やはり病弱だった。 高校に上がった今も少しでも無理をすると倒れる始末。 こうして厚手のカーディガンを着ているのも、身体が弱すぎるためだ。 「…っていってもそれに答えてくれる人は誰もいないんだけど。」 私は今、1人屋上で昼食を摂っている。 何故1人か? 私には友達がいないから。 頻繁に保健室に通っているせいで、友達を作るタイミングを失った。
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