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今朝は、ぽっかりと梅雨の合間に、太陽が紫陽花のように咲いていた。
だから、思わず傘を忘れてしまったの。
帰りに、桶をひっくり返したような雨が降るなんて思わなかったから…
途方にくれていた私に、ちょうど外から帰ってきた貴方が、傘を差し出した。
「これどうぞ。」それだけ言って、手渡すと貴方は事務所へと消えていった。
濃紺の男物の傘だとばかり思ってたから、さした時衝撃的だったの。
満点の星空がひろがっていたから。
あわてて返そうと階段を駆けのぼった。事務所の扉をそっと開くと、ひとり黙々と、事務処理している背中が、「邪魔するな」のオーラを背負っていた。
声をかけそびれてしまった私は、ありがたく傘を借りて帰った。
だって、こんな時の貴方は朝まで仕事していることを知っていたから。
ただ、貴方がこの傘を使うことに、驚いていた。想像すら考え付かないくらい、似つかわしくなかったから。いつもの貴方からは。
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