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夜の廃屋に幾つかの高い足音がじんわりと響く。その数、4人分。私と、部活のメンバー3人のものだ。
私たちは、いわゆる心霊現象について探求する部活を組んでいて、今日は課外活動という名の校則及び、法律違反に勤しんでいた。
「おー、やべー、何か超雰囲気あるな」
懐中電灯で闇を照らしながら、一緒に歩いていたタクが声を響かせた。
タクはクラスの中でも、お調子者のカテゴリに属するヤツで、多分、今日のメンバーの中で、一番軽い気持ちで参加している。結構危険な場所だから、と言っておいたはずなんだけど…。
ここは県内でも数少ない危険な心霊スポットの一つで、俗に『廃屋』と呼ばれるところだ。この辺で『廃屋』と言えば、大体ここのことを指す。
「うぅ、怖いー…」
私のすぐ隣にいたナナが怯えた様子を見せた。
人一倍臆病で、しかし人一倍『勘』が強いナナ。
彼女には「怖いなら、参加しなくてもいいんだよ?」と、何度も言って聞かせたが、結局、私の腕にしがみついて付いて来た。
何も起こらなければいいが、もし何かあったときに、真っ先に気絶しそうだから困るのだ。
「あんまり怯えてると、危ねえぞ」
そして最後に口を開いたのは、先導を切っていたヨウスケだった。
成績優秀、容姿端麗、基本無口の霊感少年だが、デリカシーの無さは一級品らしく、今まで何人もの女を泣かせてきた奴だ。
「霊がいるとするなら、存在する時点でれっきとした科学現象だ。巷で騒がれる憑り殺されるという現象には、精神面に異常を来すという共通点が多く見られる。ならば、あまり精神を不安定にするのはよくない」
やめなよヨウスケ。ナナにそんな難しいこと言ったって理解出来るわけないし、出来たとしても、怖いもんは怖いのにどうしろっていうのよ。
「ね…、ねぇ、美紀は怖くないの…?」
ナナがおそるおそるといった様子で私に話しかける。確かに怖いは怖いけど…。
「大丈夫だよ。悪霊、怨霊なんてそうそういるもんじゃないから」
ナナを落ち着かせるために、とりあえずそう言っておいた。いや、そう言うしかない。
それに、悪霊や怨霊の類に出会う確率が低いのは事実だ。憑り殺されるなんて、それこそ聞いたことがない。
「何だよ美紀ー、何か頼もしいじゃん」
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