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タクが笑いながら言うが、笑い事じゃない。というか正直、アンタが一番心配だ。行動が軽率突飛で、何をしでかすか分からない。
「ちょっとタク、あんまりフラフラ歩いてたら危な…」
…っ…?
私がタクに声をかけたときだった。私は、妙な感じが前方から迫ってきているのを感じた。
「どうした?美紀?」
タクの声が聞こえ、私が足を止め、そしてナナの悲鳴を捉えたのはその直後だった。
「いやああぁぁああっ!」
絶叫の後、ナナがガタガタと震え出す。そしてその震えと連動するように、私の頭が混乱し出した。一体何があったのかを、必死に探してしまう。そして掴んだ感覚共に、私はいつの間にか叫んでいた。
「ヨウスケ逃げてえっ!!」
「…ッ!…ぐっ…離ッ…あああぁぁああっ!!」
しかし、必死の叫びは虚空へと消え、次の瞬間にはヨウスケは無数の腕に掴まれ、闇へと消えていった。
「や……ヨウ…」
恐怖で足が震える。ナナが見たのは、タクが懐中電灯で照らした先にあった、ヨウスケの肩に掛かる手だったのだ。
逃げなきゃ…。走らなきゃ…。マズい、ダメだ。ここにいたら、殺される…!
「何してんだ!走るぞ!」
私の手を強引に掴み、走り出したのはタクだった。
私はタクの手に引かれて、足を無理矢理動かされる。
そして、
あっ…
と、思ったときには、私はもうナナの腕を離してしまっていた。
「ナナああッ!」
「…ッ!クソッ!」
タクはそのまま、ナナを置き去りにし、私の手を引き走り続けた。
「ナナッ!ナナあぁッ!!」
私は親友の名を叫び続けたが、その姿はもう見えることは無かった。
そして、この世ならざる恐怖を抱えたまま、私たちは廃屋を後にし…、後日、ヨウスケの遺体と気絶していたナナが発見された。
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