1)運命の糸、紡いで。

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ならば一体どういった次第かと思えば、ぐいと体を前傾させて「伊東先生!何卒、何卒、新撰組に御力添えをお願いしたいのでございます!」と言い出した。 「全く、私に何をさせる心算か…。」 伊東は、道場の端へ胡座をかくと、その頭上に輝く月を肴に酒を煽った。呑んでも呑んでも廻るのは先の話で、全く心が晴れない。あぁ…酒の無駄。 「なぁ…仔猫さんや。 お前さんはどう考えるかね?」 「おや、お気付きで?」 そう言って、庭先にひょこりと顔を出したのは「梅」と名乗る麗容な女。ほんの三日程前に、ある日突然現れると、それっきり道場の軒先に居着いてしまった女だ。 身寄りの無い娘は世に五万といるが、この娘は女衒に売られるでも無く、何処か宿を探すでも無く。道場の軒先で暮らすこともう三日。伊東は、掴み所の無いこの女を、「仔猫さん」と呼んで目をかける様になっていた。
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