3)共に歩む死の旅路。

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心地よい秋風が吹く京の地を、伊東は、篠原や猫をはじめとした数人を連れ立って歩いていた。暑いでも寒いでもなく、滞りなく進んだ京への旅も今日で終い。漸く見えた京の街に、到着した喜びを口にするものもちらほら見える。 伊東は、篠原を説得した数日後には慣れ親しんだ江戸の街を離れた。新撰組の局長たる近藤勇の帰京にあわせて、江戸を発った形だ。 篠原は、伊東に頼まれ、内海次郎や加納鷲雄、伊東の弟にあたる三木三郎など親しい仲間に事情を話して聞かせると、江戸を発つまでの数日で、共に京へ行く仲間を数人集めた。 最も、篠原以外の面々は皆、伊東の判断ならば右に倣えという質なので、「伊東先生が京へ行き、新撰組にお入りになる。」と言うだけで事は済んだのだか。 篠原に頼み事をした伊東はと言えば、離縁の為に、妻であるうめと話し合う場を設けていた。伊東は、包み隠さず全てをうめに話して聞かせると、他の男と所帯を持って、幸せになるようにと繰り返し説いて聞かせる。
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