3)共に歩む死の旅路。

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篠原がいたく感心したふうに言う。確かに、仕事が出来る場所が多いというのは監察としての能力の一つである。 梅は内心で、「未来、貴方の好敵手の一人になる男ですよ!」と叫び散らす。しかしながら、当たり前だが声なき声は往々にして通じない。梅は早々に「ま、篠原長生きだから…いっか。」と諦めた。 「随分と感心な反面、厄介な存在でもあるね。それだけ顔が利くのなら、苦界(花街)にだって潜るのも安いだろうよ。」 「兄上の仰る通り。我々には、出来ない技ですからね。こういう話だって聞かれているやもしれないし、況してやその男の息がかからない店を探すのが大変そうだ。」 三木が苦々しくそう呟けば、伊東は我が意を得たりといった顔で、深く深く頷いた。そして、それっきり…誰も口を開かない。 重く暗い沈黙が支配する部屋の中、「やるしか…ねぇだろ。来ちまった以上はよ。」という篠原の声だけが、一筋の光となり、皆の顔を上げさせる。 期待と不安がない交ぜになった心境を、巧妙に隠す者が四人。部屋に伝わる空気はこれ以上なく奇妙なもので…。結局、その日の夜は、誰一人眠る様子が無かったのだった。
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