4)華やかな時と先生。

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新撰組は此処の所、飛ぶ鳥を落とす勢いがあり、隊士達も皆稽古に余念が無い。朝から晩まで竹刀を振るう音が止まず、時折、竹よりももっと重い音が響く事すらあった。 そんな時、梅は決まって「あぁ…試衛館のお偉方が稽古をしてるのねぇ。」と感心した様子で、屯所の前を横切る。 新撰組局長である近藤勇の帰京に合わせて新撰組へ参入した伊東の一行は、すっかり京の街に溶け込み始めていた。 今だって、巡察を終え、僅かな余暇が出来た伊東に付き合わされる形で、梅は甘味屋で茶を飲んできた次第だ。 互いに監察を恐れて大したことも話さないが、それでも、旨いものに舌鼓を打ちつつ、気心の知れた人と過ごす一時は、二人の心を確実に癒していた。 梅はあれから街を歩いて回り、京での住処を西陣の聚楽に据えた。此処は、良質な土が採れることや、かの秀吉公ゆかりの地とあって、この時代に於いても一定の支持を集める街である。
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