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そういえばどんな所に引っ越すのか、あまりにも急だったから聞く余裕が無かったな……
そんなことを考えながら携帯の待ち受け画面をずっと見ていた。
時刻は午後4時28分
この時期になると日が落ちるのは早い。空はもう薄水色の涼しい色に変っている。
「なあ、一」
助手席に座っている父さんが煙草の煙をゆっくりと吐き出しながら話しかけてきた。
「なあに? 父さん」
「引っ越し先の街がどんなところか知ってるか? 」
まさに今自分が考えていたことを言われて、思わず口元が緩んだ。ちょうど知りたかった事だ、聞かない手はない。
「知らないよ、どんな所なの? 」
「いいところだよ、『都会』のイメージをそのまま形にしたような街さ。その都心部のマンションに住むんだ、嬉しいだろ? 」
父さんは無邪気な笑みを浮かべながら話しだした。
「でなぁ、そのスーパーがまた大きいんだ……」
「ほらお前アニメとか好きだったろ?そういう店もたくさん……」
延々と話しかけてくる父さんを軽くあしらいながら街への景色を眺めていた。
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