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4月8日、今日は入学式だ。
試験の結果はというと、正直余裕だった。面接も上手く出来た僕は合格する事を確信していた。
校長先生の話が終わり、それぞれのクラスへ案内された。さすがに新築なだけあって清潔感のある綺麗な教室だ。
説明も終わり、皆が帰り始める。僕は母さんに学校の様子をメールで知らせようとしていた。
「なあ君」
後ろから不意に話しかけられた拍子に携帯を落としてしまった。
「ああごめんごめん、俺が拾うよ」
「……ありがとう」
「壊れてない?画面とか」
「大丈夫だよ。ところで何か用? 」
「そうだったそうだった、珍しい名字だねって言おうと思ってたんだ」
「そういう君こそ珍しい名字じゃないか」
彼は月見里 真(やまなし まこと)
クラスのムードメーカー的な存在だがどこか陰のあるような人だ。
お互い名字が珍しいことからすぐに打ち解けた。思えばこの街に来て初めての友達だ。帰りも話ながら帰った。僕が田舎から来た事、彼の身の上話、色々話した。二人ともヘヴィーメタルが好きなこともわかった。やっぱり仲良くなれそうだ。
「じゃあ僕の家ここだから」
「うん、じゃあな」
「なんでついてくるの……? 」
「だって俺もここだし」
「何階? 」
「一番上」
……思い出した、受験の日の朝駆け込んだエレベーターに乗って人だ。あの時は私服だったから気付かなかったな。
月見里の家が隣だという事を知った頃にはもう空は暗くなっていた。
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