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―バッと通ったトラックが
君を轢きずって鳴き叫ぶ―
けたたましい音が、鳴り響く。
一面に、広がる紅。
「う‥ッ、」
血飛沫の紅が、君の香りと
混ざり合ってむせ返る。
騒然となる道路。
叫び声、助けを呼ぶ声‥
様々な人々が行き交う。
‥その中に、ふと、視線を感じた。
顔を上げれば、人混みの中に
黒い服を身に纏った、
色白で、ハーフのような顔立ちの男が
こちらを向いて立っていた。
‥他にも、野次馬はいる筈なのに。
その男から、目が離せない。
それは、その男が他とは違う
ただならぬオーラを発していたからか。
「‥陽、炎‥?」
不意に、出てきた言葉。
‥そうだ。
あの男は、〝陽炎〟だ。
ゆらゆら揺れるその男。
何やら、口が動いている。
「‥嘘、やろ‥?」
〝嘘じゃないぞ〟
確かに、陽炎の口はそう動いた。
不気味に嗤う陽炎。
「―‥っ、」
目が、眩む。
そして、僕はそのまま意識を飛ばした。
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