晴れのち雨

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20XX年。 地球は高度に発達した科学力と人類の英知によって、めざましい発展を遂げていた。 人間の、人間による、人間の為の、地球改造計画。 そんな馬鹿げた計画が本気で話題になる程に、人類は着々とその手を世界中へと伸ばしていた。 医学、生物学、哲学、建築学、経済学、法学etc……。 ありとあらゆる学問が既存の枠を超えて大きく成長・進化し、地球全体が高度成長期にあるようだ。 古いものは次々と時代の波に呑まれ、忘却の彼方へと流れ去っていく。 若者だけならず、老若男女誰もが新しい物を欲し、地方から都市まで余すところなく近代化の大パレード。 そしてこの流れにいの一番に乗り、その先陣を率いたのが、我らが大日本帝国である。 そんな日本も、元々は、古代の先人達が何百年とかけて築きあげてきた魔法学を愛し、義理と人情を重んじる伝統国家であった。 魔法学というのは文字通り、この世界で子供から老人まで個人差はあれど誰もが使う事の出来る魔法、その学問である。 まだ灯りもない古き日本では火や光の魔法が灯り代わりに使用されるなど、日常生活と深く混じり合い、今の今まで人間と苦楽を共にしてきたのだ。 だが地球全体が迎えた技術の波によって、その立場は時代の隅へと追いやられた。 若者を中心に、生まれてからずっと側にあった魔法を手放し、より簡単で目新しい技術力へとその関心を移していったのだ。 魔法を使うのは古い。 今は科学の時代だ。 しみったれた魔法学なんてやっていられるか。 そんな風潮は人から人へ次々と伝染し、やがて地球全土を巻き込んでいく。 もう誰にも止められない。 科学に興味を移した人類は、それがもたらす地球汚染という副作用を分かっていながらも、その魅惑に抗えないままに────────ピピピッピピピッ。 「………………朝か…………」
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