晴れのち雨

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「今日の朝は……ハムエッグで良いか……」 顔を洗い、些か気分を回復させた俺は、ボサボサ頭のパジャマ姿で台所に向かう。 十七歳の俺はまぁ、世間一般で言う花の高校生というやつで、今は高校に通うため近くのアパートで一人暮らしをしている。 両親はいない。 二人とも、とある事故で俺が五歳の頃に亡くなってしまった。 学校と、一人暮らしの為のアパートや生活のお金は全て両親が残した遺産金、政府からの少しの支援金と俺のバイト代で成り立っている。 両親の遺産金と言っても、俺が必要な教育を受けて社会に働きに出るまでの間を繋ぐ程度。 とてもじゃないが贅沢なんて出来ないのだ。 親類もいないし兄弟もいない。 付け加えれば彼女もいないし、主だった友達もいない。 それでも、寂しくはない。 寂しくはないが……毎日楽しくもなかった。 「今日もいつも通り……か」 ご飯と味噌汁、それとハムエッグ。 和洋がごちゃ混ぜになった手抜き朝ご飯をもぐもぐと咀嚼しつつ、テレビのニュースを流し聞きして俺は独りごちた。 ニュースでは今日も、日本のどこかで起きた事件や事故を次から次へと報道し、画面はパッパッと絶え間なく移り変わっていく。 変わらぬ様のことを平和と言うのなら、今の大日本帝国は間違いなく平和であろう。 あれだけの大騒ぎをして、結局は昔と大して変わらぬ生活へと戻ったのだから。 ただ、それは俺の日常を除いた日本の話、であるが。 『次のニュースです。 昨日午前六時半頃、日本海沖にて起きた漁船と巡視船の衝突事故についてですが。 またあの御方が現れ────』 「そろそろ時間か……」 新しいニュースを読み上げるニュースレポーターを右手でブチリと消して、俺は椅子から腰を上げて背伸びをする。 時刻は朝の七時四十五分。 登校時刻は八時半。 ここから学校まで徒歩十分。 まだ時間には十分な余裕があるが、俺には早く出ないといけない理由がある。
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