二人旅ですが、ナニか?

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――――― ヨーロッパ 某雪山 ――――― 「はぁ、はぁ!」 一人の金髪の少女が黒髪の少年に手を引かれながら走っている。 少年は少女と同じ速度で走っているのだが、こちらは息を切らせたりしていない。 『ガァァァァァァ!』 二人の進行方向とは逆の方向から怪獣映画で聞くような鳴き声がした。 少女が後ろに目を向けようとした。 「振り向くな! 走れ!!」 少年がそう叫ぶと同時に、鳴き声の主が接近してくる。 『ガァァァァァァァァァァァ!!!』 二人を追ってきたのだろう。 現れたのは明らかに肉を主食としている。 鋭い牙 尖った爪 さらに巨大な身体すらも宙に浮かせられる翼 【ワイバーン】 その存在を的確に表すのにこれほど適した物は無い。 「ちッ」 予定よりも早く追いつかれて、少年は思わず舌打ちをした。 「スピード上げるぞ!」 「え――キャ!」 少女の了解を得ずに少年は少女を抱き上げた。 「『右手に槍を、左手に矛を、我はその身を剣とする者なり。我は神を滅する牙となる者なり 』」 そう言い終えると、少年の体に変化が生じる。 耳は人間の物から狼の物へと変化し、ジャンパーの裾から尻尾まで現れた。
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