9・オオマチガイのセイカイ

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こんな時に限って、月は最高潮に明るい。大きなおおきな満月だった。 真っ暗な中だったら、これでもかっていうくらい見つめられたのにと密かに悔しがる。わがままばかりな私の顔は見られたくないけど、森野さんが、今どんな表情でいてくれるのは気になってしまう。 ああでも、暗闇だったらそれも分からない、か。 耳元に唇を寄せられる。 「はい。でも、最悪ではないと思います。――そんな深町さんをとても可愛く感じる僕は、間違いでしょうか」 そうしてやっと、私を包む腕に力が加えられ、苦しいくらいに強く抱きしめてくれた。 愛しい恋しいと、絶えず流れ込んでくる想いは私のもの? ――いいえ。お互いの。 そんなふうにしてくれる森野さんになら、こんなふうに捻くれて答えてみても、きっと伝わるよね。 「はい――大間違いです」 私も背中に腕をまわす。 もう届いているとは思うけど、もっと伝わるようにと。 秘めたる恋はもうやめた。だって、こんなに愛しくて仕方がない。 望んでくれてるのに、逃すなんて大馬鹿だ。 「森野さんのことが、大好きです」 私も、たったひとりに欲を出す。
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