1・コイヌとシンジンルイ

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館内一番奥のスペース、利用者も多くない原書の並ぶ方へ進んでいくと、 「いたっ! 菜々ちゃんっ!」 桜ちゃんが小さな声を上げた。 原書たちに埋もれながら、菜々ちゃんと呼ばれた人は、驚きの表情をこちらに向ける。 身長は桜ちゃんよりも遥かに小さいけれど、少し年上だろう――認識し、思わず一歩、足が停止する。 けれど、すぐに歩は進む。 「専門家、連れてきたんだ。森野さんに教えてもらおうよっ」 菜々ちゃんという人は、小柄に加えて華奢。真面目そうで、大人しそうな人だった。 消え入りそうな声で躊躇する。当然だろう。 「えっ、でも……」 「だいじょーぶだって」 「……」 怪しむように、菜々ちゃんという人が僕を見上げる。 思わず目を逸らしてしまった。
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