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これ以上不審者扱いされても困るので、職員の名札をよく見えるように掲げた。
「はい。存じております」
返答に、ひとまず安堵する。
「必要ないよー、森野さん。菜々ちゃんここによく通ってるんだから。森野さんのことだって知ってるって」
菜々ちゃんという人の困惑などお構いなしに、桜ちゃんは用件を先へと進めていく。
僕も何だか落ち着かなくなり、外の景色を眺めることにした。
この図書館は、緑が多く、敷地に余裕があるのでとても静かだ。
それらを視界に取り込むことによって、平常心を呼び戻した。
図書館の隅の空間は、桜ちゃんの声だけが小さく響く。
「森野さん、図書館のお仕事以外にも、大学で教授の研究のお手伝いしてるんだって、外国の文学のこととか。だからきっと詳しいよっ!」
「桜ちゃん、どういうことですか?」
尋ねると、
「やっと名前呼んでくれたっ!」
言いながら、桜ちゃんは何処かへ行ってしまった。
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