259人が本棚に入れています
本棚に追加
……、
「――深町、菜々です。桜ちゃんとは、お友達です」
菜々ちゃんという人――深町さんが沈黙を破り、自己紹介をしてくれた。
「っ、もっ、森野ですっ。ここの職員ですっ」
「はい。――でも、以前からも知っていました」
「っ、そうでしたかっ」
思わず後ずさってしまった。
……突然話しかけられるのは驚いてしまう。けれど、深町さんには気付かれていないようで。良かった。
「すみませんでした」
「えっ、なっ、何がでしょうかっ?」
「原書を読んでみようかと思って。桜ちゃんに、どれがいいか迷うわっ、て言ったら、任せてっ、て突然……」
「……っ、そうでしたか」
「――森野さん、お詳しそうなので、可能であれば、初心者でも読破できそうなものを幾つか、教えていただけると……あの……嬉しいのですが……」
声が、怯えている?
桜ちゃんよりも身長のある僕が、俯き加減の小さな深町さんの表情など窺えるはずもなく、感じたことが正解なのかを確認することは出来なかった。
逆こそあれど……
……怯えられるなんて、初めてだった。
そんなふうに感じてしまったものだから、僕もこんな様子だったのだろうか、と昔を色々と思い出してしまった。
最初のコメントを投稿しよう!