259人が本棚に入れています
本棚に追加
―*―*―*―*―*―
「……健人。何故僕らは、男ふたりでこんなパステル調の店にいるのかさっぱり……」
淡い色彩の、女性なら好みであろう、とあるカフェでの午後のひととき。
窓際の席に、僕と健人は座っている。
九月初日の太陽は許容量以上の熱射で、冷房がきいている店内だというのに、汗で眼鏡がずり落ちてくる。
「千花と待ち合わせ。店が休みで、久々に朝からデートの予定がさ、髪切れなんて透が急に言うからだ。時間まで付き合え」
親友は優雅にコーヒーを飲みながら、鋭い眼差しを向けてくる。その姿は店の空気と妙に馴染んでいて――……なんだ。場違いなのは僕だけか、とお腹が痛くなってきた。
追い討ちをかけるように、まるで見計らったように、さっき注文したアイスティーが運ばれてくる。
「そうだったのか、ごめん。伊達さんにも謝らないといけないな。――にしても、相変わらず仲いいね」
「透だって彼女つくればいいさ。女ゼロの職場じゃあないし、利用者だって大勢だ。そこから見定めて」
「……美容室のほうがよっぽどじゃないか。そして言い方が良くない。そっ、そりゃあ……彼女……いたらな……とかは」
僕の弱気な発言に、健人はうんざりな様子。
「健人たちみたいなのを目の当たりにすると、余計に思うけど……」
……まあ、そんな様子もいつものことだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!