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図書館には中庭があって、そこには、知る人ぞ知るベンチがふたつ並んでいる。
玄関ホール始め、館内の人が集まる所から外を眺めても死角になっていて、なかなかの穴場。どれほどの人が存在を知ってるんだろう、というくらいの秘密基地。
だからこそ、彼は安心して、出勤日は毎日、中庭のベンチで休憩時間を過ごすんだろう。
それは今日も変わらず。
「こんにちは、森野さん」
九月も末だというのに、まだ日差しは厳しく――なのに、森野さんは涼しげだ。この人の周囲だけ、魔法とかで心地よい風がそよいでるんじゃないかと想像してしまうくらい。
「っ!?」
念のため、服装は地味に、お化粧だってほとんどしてこなかったのに、声も出ない動揺をされてしまうなんて。
……そういう問題じゃなかったのか。反省だ。
でも約束します。
決して、困るほど近くになんて行かないから。
大丈夫だよ。
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