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「こっ、こんにちは深町さんっ」
名前を覚えてくれていた。そのことに、とても感動する。
少し前、私は偶然にも森野さんと話せて、自己紹介まで済ませることができた。
桜ちゃんのおかげだった。
中学三年生の桜ちゃんは、中学三年生なのに、私より十センチ以上背が高い。……いやでも、私の身長が低いだけで、桜ちゃんはわりと背が高いくらいなんだけど。
長距離を走る選手みたいに身体はすらりとしていて、その人たちよりも滑らかだから見惚れる。足が長くて、ショートカットが似合って、色々と分けてほしいとこだらけの女の子。
図書館職員の香田さんの妹で――なんて美人姉妹だろう。
桜ちゃんが夏休みの間、図書館で頻繁に顔を合わすうち仲良くなった。
――昨今の、僅かな原書ブームの中、私もその気になってしまい、図書館で相性の良さそうな本を選んでいた。
迷っていると、桜ちゃんがいきなり森野さんを連れて来た。
そうだ。この人は詳しい人だった。なんで気づかなかったんだろう。
後悔した。
……けど、桜ちゃん無しでは、気づいてても動けなかったんだけど。
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