1・コイヌとシンジンルイ

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森野さんの視線はあちこちに揺れだし、落ち着きをなくし、身体の動きもぎこちなくなってきていたから、もう限界なんだなと思い退散することにした。 けど、そんな私よりも早く森野さんが動き、休憩時間が終わりだからと行ってしまった。その足は、僅かにもつれていた。 私はひとりになった中庭で、森野さんがいたベンチの隣、もうひとつのベンチに座った。 嬉しさと緊張で震える指先を自ら労わる。 そして願う。 願えるものの全てに願う。 ――お願い。私、またここで森野さんと会いたい。 一番離れたところに座るから。 決して、それ以上近づかないから。 だからお願い―― また、そこに居てください。
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