2・キミにウソ

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 ―*―*―*―*―*― 焼き芋屋の匂いが風で運ばれてきた十一月初旬。 中庭のベンチで、僕は初めて、自分から会話らしきものを実行してみた。 「ささっ、最近、近頃……深町さんは、よくここに来ます。それは、何故……」 会話の部類に入るのか……訳の分からない、馬鹿な質問だ。 けれど、纏わりつく違和感の答えがどうしても欲しかった。 ――あれ以来、深町さんは、週に一度だったペースを二度ほどに増やし、図書館にやって来る。そして、半分ほどの確立で、この中庭で遭遇する。 手製らしき栞を読みかけのページに挟み、深町さんがこちらを向いた。 僕は若干視線を逸らす。 「それはですね――することがなくなってしまいまして。留年の心配なし。就職も内定済み。卒論も平気です」 僕が薦めた原書のリストから選んだ一冊を僕に示す。さっき栞を挟んだ本だ。 「だったら、卒業までは心残りのないよう過ごそうと」 それは、なんて淀みない答えだっただろう。 けれど……
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