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焼き芋屋の匂いが風で運ばれてきた十一月初旬。
中庭のベンチで、僕は初めて、自分から会話らしきものを実行してみた。
「ささっ、最近、近頃……深町さんは、よくここに来ます。それは、何故……」
会話の部類に入るのか……訳の分からない、馬鹿な質問だ。
けれど、纏わりつく違和感の答えがどうしても欲しかった。
――あれ以来、深町さんは、週に一度だったペースを二度ほどに増やし、図書館にやって来る。そして、半分ほどの確立で、この中庭で遭遇する。
手製らしき栞を読みかけのページに挟み、深町さんがこちらを向いた。
僕は若干視線を逸らす。
「それはですね――することがなくなってしまいまして。留年の心配なし。就職も内定済み。卒論も平気です」
僕が薦めた原書のリストから選んだ一冊を僕に示す。さっき栞を挟んだ本だ。
「だったら、卒業までは心残りのないよう過ごそうと」
それは、なんて淀みない答えだっただろう。
けれど……
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