1・コイヌとシンジンルイ

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これからデートのふたりを残して、僕だけ一足先に店を出た。 むせ返る外気さえも今は心地よくて、大きく呼吸をし、ついでに伸びもする。 「っ?」 チクリ、と襟元に違和感を感じた。 午前中、健人に切ってもらった髪の名残だと気付き……デートなら、言ってくれたなら、今日は遠慮したのに、ととても申し訳なく思う。 ……あのふたりは、いつもそうやって、僕に時間を割いてくれる。 そして、それを面倒なことではなく、当然だと思っている。 そうしようとしてなっているのではなく、ごく自然なこととして。 ――いつからだろう? なんて、とぼける気はない。 カフェという場所は、隣の席との間隔が狭くて苦手だ。会話や何気ない動作、自分の全てが、見知らぬ人に筒抜けのようで落ち着かない。 ……現実……隣の赤の他人は、僕のことなど気にもしていないのだけれど。 でも仕方がない。 今日のカフェは特に、だ。 僕と健人以外……女性だったから、特に。
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