ラプソディー

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「そうこうするうちにあたし達は惹かれあい付き合うようになりました」 女も男の視線に気づき一瞬男の顔を見た。 「凄い話ですね……」 こんな複雑なカップルがいるのかと若女将は内心驚いていた。 「あたし達もうすぐ結婚するんです」 顔を赤らめ女は言う。 「皮肉な話ですよね。 俺達はいつも二人を応援してました。 それが逆に結婚を認められたんですから」 下を向き男は下唇を噛み締める。 「少なからず兄達の事があったからすんなりと結婚を認めてくれたんだと思います」 女の目には涙がたまっている。 「……親同士の喧嘩で振り回される子供達。 はっきり言って俺達からしたら迷惑な話しです」 男は嫌そうな顔をして頭をボリボリかく。 「……もしかしてここに供養に来られたのですか?」 二人を交互に見ながら若女将は尋ねる。 「供養……というより、報告ですね」 照れ臭そうに女は言う。 「俺達は結婚します。 姉ちゃん達の分も幸せになります……ってね」 恥ずかしげもなく男は堂々と言った。 「だからあの部屋にこだわったんですね」 納得したように若女将は頷く。 「……あたし達さっきみたんです」 若女将を見ながら女は真剣な顔をする。 「みたって何をです?」 何となく若女将は身構える。 「二人がベランダで寄り添いながら外を見てるのが見えたんです」 優しく笑いながら男は言う。 「……幽霊ですか」 若女将は少し青い顔をした。 「幸せそうだった。 例え困難があっても喧嘩をしても二人は幸せだったんだなって感じました」 満足そうに女は顔を赤らめ優しく笑った。 「今度は俺達が幸せになる番なんです」 男は女の顔を見る。 「お兄ちゃんの分も……」 男に答えるように女は深く頷く。
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