a fingertip

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** その指に……… 目がいくようになったのは何時からなのか、正直覚えていない ゴツすぎず、かと言って中丸のように細く繊細なものではないのに もう10年近くの友人で、親友でもある彼の指に、何故か自然と視線がいくようになった ――どうしたんだろ、俺 自分で自分の思考がよくわからない 主演ドラマの撮影が終わったのが昨日の深夜 今日の撮影は夕方からの予定って事で、久々に昼間にゆったりと出来る貴重な時間の中、何気なくつけたテレビに映ったアイツ 映画から飛び出したバンドの、一夜限りのラストライブの密着取材 映画撮影の風景やライブのリハーサルの模様も紹介されている ――ああ、コイツまた風邪ひいてたんだ 本当によく体調悪くするんだから… なんて…… ラストライブの本番当日は、俺は撮影で観に行けなかった “なんだ…、カメ来れねぇんだな” って、寂しそうな表情に胸がツキンと痛んだ テレビからのアイツの歌声に、飛んでいた意識が呼び戻されて見つめた熱唱する姿……の ……指先 マイクスタンドに軽く触れるその指先を見て ――ドクン 何かが躯を通り抜けた気がした  
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