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仕方なしに真っ直ぐ帰ろうと、楽屋へ戻り身仕度していると携帯が鳴り響き
着信相手を見て体が固まった
――アイツの電話になんか、今出れる訳ねぇし
シカトを決め込み支度を進めていれば、そのうちに鳴り止んで
ホッとしながら、タクシーを拾うために局から出た
「何で電話出ねぇの?」
暗い駐車場から声をかけられて思わず立ち竦む
こんなとこで聴こえるはずのはずのない、甘くて…でも、少しの怒りを含んだアイツの声
背後から再び
「なぁカメ、なんで?」
なんでって、そんなん言える訳ねぇし
でも…、コイツは応えるまで執拗に聞いてくるから
「ゴメン、音消してたから気づかなかった」
って、後ろ向きのまま誤魔化して言うと
腕を引っ張られ、クルリと正面に向けられる
俺の表情を探るように見つめられて、正直焦った
コイツは、何故かいつだって俺の嘘を見抜いてしまう
でも、こんな暗い場所なら大丈夫だよな…?
ハァ…、と1つ溜め息を吐かれて一言
「送ってっから」
また腕を掴まれて歩き出す
腕から伝わる体温に、躯の芯が熱を帯び
どんどんと熱くなっていく
腕を掴んでいる指先に目がいき、それを見た瞬間に
――触れたい
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