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一瞬、意味が解らなかった。
頭に入ってくるのに、気持ちがそれを受け止めきれないでいる。
茫然と眺めて、何度となく読み返して
やっと脳が理解した瞬間に湧き上がったのは、不思議な事に怒りでも哀しみでもなかった。
――なんだ、そういう事か…
妙に落ち着いた気持ちで、何故か“やっぱり…”って思ったんだ。
体が勝手に動く感覚。
未だに目覚めない彼の掌から、そっと携帯を抜き取った。
同じ女性からの何通ものメール
その一通一通に愛の言葉が記されている。
中には自分で撮ったであろう際どい写メなんかも貼ってあったりして…
この女性は、俺…というか、恋人の存在を知らないようだった。
自分がコイツの彼女と思っているようで…。
コイツの送信フォルダを見ても
“俺も、また逢いたいな”
とか、思わせぶりな言葉ばかり
ここに来て、やっと苛立ちを感じた心のまま、携帯を再び眠っている男の掌に戻した
――…浮気、してたんだ…
そう思うと、何だか彼を起こして問い詰める気にもなれず、急激に冷めていく心。
一緒になんかいたくないって思って、携帯1つだけ持ったまま、家から飛び出した。
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